宇宙ベンチャーQPS研究所、ベンチャー企業で初めて衛星リモセン法「衛星リモートセンシング装置使用許可」を取得。
世界初の地球観測用小型高分解能SAR(合成開口レーダー1)衛星の開発に取り組む株式会社QPS研究所(本社:福岡県福岡市、代表取締役社長:大西俊輔、以下「QPS研究所」)は、この度内閣府より「衛星リモートセンシング記録の適正な取扱いの確保に関する法律(平成28年法律第77号)」(以下「衛星リモセン法」)に基づく「衛星リモートセンシング装置使用許可」の認可を取得致しました。この「衛星リモートセンシング装置使用許可」の認可は宇宙ベンチャーとしては初の認可となります。また、今回の衛星リモセン法認可取得にあたり、QPS研究所の小型SAR衛星より取得した高精細データの記録を、クラウドインフラの構築、システム開発を行う株式会社Fusic(本社:福岡県福岡市、代表取締役社長:納富貞嘉、以下「Fusic」)と共にクラウドベース2で構築した点においても初の認可となります3。今回のクラウドベースでの認可は、少ない投資でも衛星データビジネスへの参入を可能とし、日本における宇宙ビジネスの拡大に大きく寄与する一歩になると考えております。
1 SAR (合成開口レーダー):電波を使用して地表の画像を得るレーダー。雲や噴煙を透過し、昼夜を問わず観測することができる点が特長。
2 これまでは自社データセンターを持つ企業による認可でしたが、これではビジネス開始前に数十億円規模の初期投資を必要とすることとなり、資金に制限のあるベンチャーの衛星データビジネス参入の大きな壁となっておりました。
3 Fusic社も今回のクラウドベースのシステムの構築に当たり、衛星リモセン法の「衛星リモートセンシング記録取扱」の認可を取得致しました。
2005年に福岡市にて創業した宇宙ベンチャーQPS研究所は、九州大学の名誉教授陣と若手技術者・実業家が幅広い経験と斬新なアイデアをもとに、世界トップレベルの衛星情報ビジネスを創造する会社です。創業以前より宇宙技術を伝承し、育成してきた約20社の九州の地場企業(北部九州宇宙クラスター)と共に、この度QPS研究所は天候に左右されず24時間観測可能な小型SAR衛星を開発しました。一号機の衛星はすでに完成しており、打上げを今年秋に予定しております。
これまで地球を観測するための人工衛星分野においては可視光を使用する光学(カメラ)
衛星4が大半を占め、小型・高分解能・低コストの光学衛星は世界的にも数多く存在していますが、それらでは地球上の約7割を占める夜間や雲の存在する地域を観測することが困難でした。また、夜間や雲の存在する地域でも観測することのできるSAR衛星も存在していますが、これまでSAR衛星は大きなアンテナを必要とし、多量の電力を消費するため、小型化が困難であり、数百kg〜数トンの重量を持つ大型で高コストのものが主流でした5。
4 光学衛星:可視光などにより地表の画像を得る人工衛星。
5 2018年より海外の小型SAR衛星を開発するベンチャーが実証機を打ち上げ始めていますが、分解能1mという高精細な観測ができる100kg小型SAR衛星はまだ実現しておりません(弊社調べ)。
QPS研究所は、これまでの豊富な衛星開発の経験を生かして、直径3.6mと大型でありながら、わずか10kgと大変軽く、更に打ち上げ時はコンパクトに折りたたまる収納性の高いアンテナを実現することで、電力とアンテナのハードルを乗り越え、従来の20分の1の質量の100kgへの軽量化、コストも従来の約100分の16を実現できる目処をつけました。
6 従来の数百億円の大型衛星と比較して数億円にコストダウン。
今回の衛星リモセン法に基づく「衛星リモートセンシング装置使用許可」の認可により、QPS研究所は分解能3m以下の観測が可能なSAR衛星によるデータの取得、取り扱いができるようになり、これにより自社開発の約100kgと小型でありながら、地上分解能 1mという高精細なSAR衛星を世界初で実現することができます。さらにQPS研究所は2024年頃を目標に、36機のSAR衛星体制を構築し、世界中のほぼどこでも約10分で地球を撮影することができる世界を構築し、継続的に得られる画像データとAI(ディープラーニング、機械学習等を駆使した分析技術)を組み合わせることにより、インフラ老朽化の検知、農業、海洋・漁業等の効率化、物流の効率化、災害時の迅速な状況把握、自動運転向けの高頻度高精細3Dマップの実現等のアプリケーションへの活用を目指しております。