Project
HOME > プロジェクト

未来を切り拓く技術の結晶

QPS-SAR PROJECT小型SAR衛星コンステレーションによる
準リアルタイム地球観測

Why SAR satellite?

SAR衛星の特徴

従来の衛星は、
リアルタイムに
観測できない

現在打ち上げられている地球観測衛星のほとんどは、カメラ(光学センサー)を使用して地球を撮影しています。
しかし現在の光学センサーの技術では、夜間や天候不良時の撮影は不可能。
地球のおおよそ75%が常に夜間もしくは天候不良であるという事実に対し、これでは真の地球観測にほど遠いものがあります。24時間、どんな天候でも観測できる衛星が必要です。

夜間や天候不良時も撮影可能なSAR

そこで私たちは、この課題を解決できる技術「SAR(Synthetic Aperture Radar)」に着目しました。
しかし既存のSAR衛星は、大きなアンテナと多量の電力を必要とするため、通常は1トンや2トン以上と大型の衛星が一般的です。
さらに、常に観測地点の上空を飛んでいる状態にするためには多数の衛星を打ち上げる必要があり、膨大なコストと労力が必要になってしまいます。

×

観測衛星の種類

人工衛星には地球観測衛星や、通信衛星、測位衛星、科学衛星など様々な種類があり、衛星から送られてくる情報は、天気予報やテレビ中継、GPSなどの形で私たちの毎日の生活に役立っています。
それらのうち、地球観測衛星には光学式とSAR(Synthetic Aperture Radar)と呼ばれる合成開口レーダーを使う2種類がありますが、その多くは光学式で、カメラと同じような原理で地球を観測しますが、光がない夜や雲に覆われている悪天候時は撮影することができません。
一方SAR衛星は、レーダーが地表に向けて電波を発射し、地表にある物体から反射された電波の位相(位相差)を計測し、その位相情報を元に画像を生成します。そのため、SAR衛星は天候や時間帯に左右されずに地表を観測することができるのです。
しかし、光に比べて波長が長いために十分な解像度を得ようとすると巨大なアンテナ、多量の電力を必要とするため、小型化は不可能と言われていました。

晴れ

曇り

夜間

光学カメラ/センサー マル バツ バツ バツ
SARSynthetic Aperture Radar マル マル マル マル

世界トップレベルの100kg台
高精細小型SAR衛星

こうした中、私たちは軽量で、収納性が高く、宇宙で展開する大型のアンテナの開発に成功。その結果、1m以下の高分解能でありながら、従来の衛星に比べて20分の1の質量の100kg台へと軽量化、コストも約100分の1と、常識を超えるイノベーションを実現しました。
これが世界トップレベルの100kg台高精細小型SAR衛星「QPS-SAR」です。

×

衛星アンテナの開発ストーリー

SAR衛星の小型化を叶えるためにQPS研究所が生み出したのが小型の衛星に搭載できる収納性が高く、超軽量の大型のアンテナ(特許取得)です。
直径3.6mもある大型のアンテナですが、直径80cm、高さは15cmほどまでに小さく畳むことが可能です。
そして、宇宙に打ち上げられた後にバネの力を使って、少しのたるみもない綺麗なお椀型のアンテナに展開し、強い電波を出すことが可能になります。
アンテナのリブは糸島市にあるバネメーカー「峰勝鋼機株式会社」、その他の構造部品の製作と組み立ては筑後地域で活動する「円陣スペースエンジニアリングチーム」、金属メッシュの縫製は大川市の「カネクラ加工」の協力があり、福岡を中心とした様々な技術を結集して完成したのがこのアンテナです。
この斬新で攻めた設計のアンテナ開発のために100以上の試作品を作り、何百回もの試験を行い、成功に漕ぎ着けました。

2号機イザナミがファルコン9に組みつけられたときの状態 2号機イザナミのアンテナ展開試験の様子

衛星コンステレーションで
地球のほぼどこでも平均10分以内に撮影

QPS-SARは、夜間や天候不良時でも、必要な時に必要な観測地点を観測することができます。
そのため、1つの軌道に9機の衛星を投入して4つの軌道で地球を取り囲み、36機の衛星でコンステレーションを構築することで、世界中のほぼどんな場所でも平均10分以内に撮影し、特定の地域を平均10分に1回定点観測することが可能になります。
また、QPS-SARに搭載された軌道上画像化装置※、および衛星間通信※といった最新の技術を導入し、観測後に高速配信することが可能です。(※3号機以降の衛星に導入)
これで、継続性のある画像をデータとして収集できるようになり、土地や建物などの“静止体”だけでなく、車や船舶、更には人や家畜などの“移動体”をデータとして蓄積できるようになるのです。

価値あるデータで未来を開拓

小型SAR衛星で収集したデータは、未来を大きく変える力を持っています。
移動体データの活用により、新しい経済価値を発見できたり、安心・安全な街づくりに貢献したり、また、気象データ、市場データ、経済データ等と組み合わせることで、将来の作物の価値予測や、国・地域の経済予測が可能になります。そのポテンシャルは無限の可能性を秘めています。
また、小型SAR衛星が生み出す価値あるリアルな“データ”を「AI」と組み合わせることで、先進の未来が見えてきます。

有事の際は迅速に状況確認

災害大国である日本は、地震や台風、大豪雨、洪水、火山噴火等のリスクと常に隣り合わせです。
万が一災害が起きたとして、必ず昼間という訳ではなく、もちろん晴れた日であるとも言い切れません。特に台風や大豪雨の場合はそもそも悪天候であることより、従来のカメラの衛星では雲に遮られて地表を撮影することはできず、飛行機やドローンを飛ばして状況を確認するということも簡単ではありません。
そのような中、雲や噴煙を透過して地表を観測できるQPS-SARが複数機地球の周りを飛んでいれば、24時間、天候に関係なく、迅速に状況を把握することができるのです。

QPS-SARが可能にするインサイト

可視化 Visualization

人・車・船・牛など
移動体の動きを
ビジュアライズ

  • ・人の動きや数を分析して土地や建物の真の価値を算出
  • ・船舶の航行状況を確認、効率的かつ安全なルートの分析
  • ・特定の車に限定して行動を分析
  • ・A・B両地点で同じイベントを実施した場合の人の流れや経済状況の違いを可視化
未来予測 AI

気候・市場・経済データ等との
組み合わせで将来状況を予測

  • ・交通状況から、その国・地域の経済を予測
  • ・トウモロコシの生育具合から、将来の先物市場での価値を予測
  • ・ブドウの生育具合からワインの味、将来価値を予測
  • ・店舗カメラとの連携で街全体のセキュリティシステムを構築
  • ・人・車の行動パターン、建物の変化の蓄積による最適ルートや危険の予測等、自動運転の実現をサポート

SARデータ提供サービスについての詳細はこちらをご覧ください

PRODUCT 地球の準リアルタイム観測データ MORE
About QPS-SAR

QPS研究所が開発するSAR衛星

QPS-SARは技術実証機である1、2号機から更なる性能・機能の向上を実現しました。
現在、QPS研究所はコンステレーション構築に向けて改良された衛星を大量生産できるよう体制を整えています。

  • アンテナ
  • 観測モード
  • 軌道上画像化装置 (FLIP)(※)
  • 電気推進スラスター
  • 衛星間通信
  • 衛星デザイン
  • 太陽電池パネル
×

アンテナ

打上げ時には直径80cm ほどに小さく折り畳まれたアンテナは広げると直径3.6mの大きさへ。3号機以降はアンテナの精度やレーダー装置を性能向上させ、より高精細・高画質な撮像が可能になりました。
ポイント:アンテナのリブを増やして、たるみのないさらに美しい鏡面で強い電波を出せるように。それにより46cm分解能の画像取得に成功しています。

×

観測モード

QPS-SARには観測幅優先の「ストリップマップモード」と分解能優先「スポットライトモード」の2つの観測モードがあります。
前者は1.8mの分解能で広域の観測が可能です。後者は50cm以下の分解能で局所的な観測が可能です。
※販売するサイズについてはお問い合わせください。

×

軌道上画像化装置

軌道上画像化装置によって、観測直後に膨大な生データを衛星内で画像化。その結果、衛星からのダウンリンク量を大幅に削減することが可能となります。さらにAIと組み合わせて、必要とする情報を素早く抽出し、速やかに地上へ届けることができます。
※JAXAとアルウエットテクノロジーの共同開発

×

電気推進スラスター

軌道維持とミッション終了後の軌道離脱を実施します

×

衛星間通信

静止軌道衛星を用いた衛星間通信システムを用いて、より早く衛星にタスクを送信したり、軌道上で生成した画像をタイムリーに地上へ送信したりすることが可能です。

×

衛星デザイン

バス部の設計、製造、組み立てをすべて自社で管理しているため、ミッションや状況に合わせて内部のアップグレードや新しい機器やセンサーの設置など、迅速に、そして柔軟に対応することが可能です。
50km 圏内に豊富な経験と高い技術を持つ多くのパートナー企業があることはスピード感のある開発のための大きな利点です。

×

太陽電池パネル

最適に配置された太陽電池パネルにより、QPS-SARは高い出力と容量を実現し、より効率が良く長い時間の高画質の観測を可能にしています。

QPS-SAR PROJECT
Launch Report

2019年12月に打上げQPS-SAR 1号機
「イザナギ」

日本初の100kg台小型SAR衛星であるQPS-SAR 1号機は「イザナギ」と名付けられ、2019年12月11日18時55分(日本時間)にインドのサティシュ・ダワン宇宙センターからロケットPSLVにて打上げに成功。当日は福岡県庁ロビーでパブリックビューイングが開催され、応援に500名以上の参加者が集まりました。

打上げの翌日12月12日早朝にイザナギと初交信に成功し、12月16日には衛星の要であるアンテナの展開に成功。12月18日にはレーダーの使用を開始しました。初の試みづくしだったイザナギは衛星機能の95%の成功を確認することができましたが、最後に一部不具合が見つかり、残念ながら最終ステップのデータの画像化には至らず、これをもとに2号機の改良に取り組みました。

衛星打上げ前のPSLV-C48。(提供:ISRO)
打上げ前に現地のロケット前で関係者と撮影された記念写真

2021年1月に打上げQPS-SAR 2号機
「イザナミ」

1号機の結果を受けて改良を加えられたQPS-SAR 2号機「イザナミ」は2021年1月25日0時00分(日本時間)にケープカナベラル空軍基地からSpaceX社のファルコン9によって打上げられ、高度約525kmに投入されました。コロナ禍による影響を受けて、打上げ時はオンラインでのパブリックビューイングが開催されました。深夜にも関わらず、800名以上に視聴いただき、その様子は新聞やテレビ、ウェブ記事で多く取り上げられました。

打上げの翌日、1月25日にイザナミとの初交信に成功。そして1月30日にはアンテナを展開、その後、衛星の調整を続け、3月3日には待望のファーストライト(初画像)の取得成功を発表しました。また、5月13日には小型SAR衛星において日本で初めて70cmという高分解能かつ高精細な画像の取得に成功しました。

ファルコン9内部の写真。QPS-SARは左側に組み付けられています。(提供:SpaceX)
打上げ時のファルコン9(提供:SpaceX)

2022年10月に打上げQPS-SAR3号機「アマテル-I(アマテル・ワン)」
QPS-SAR4号機「アマテル-II(アマテル・ツー)」

2022年4月にQPS-SAR3、4号機の打上げをIHIエアロスペース社に委託することで契約を締結。これらの衛星は「アマテル-I、-II」と名付けられ、衛星コンステレーションを成すための最初の2機という役割に向けて、イザナギ、イザナミの開発、運用成果を元に改良を重ねて開発されました。この2機は、2022年10月12日9時50分(日本時間)に鹿児島の内之浦宇宙空間観測所からイプシロンロケット6号機によって打上げられました。しかし、打上げ後、ロケットの3段を2段から分離しようとする時点で目標姿勢からずれていることが分かり、衛星を地球周回軌道へ投入できないと判断されたため、指令破壊信号が送られて残念ながら打上げは失敗となりました。

内之浦宇宙空間観測所からイプシロンロケット6号機の打上げ。
衛星を射場へ出荷する前日の集合写真

2023年6月に打上げQPS-SAR6号機「アマテル-Ⅲ(アマテル・スリー)」

QPS-SAR5号機は契約したロケット事業会社の状況により打上げ日を新たに調整することとなり、先行して6号機「アマテル-Ⅲ」が2023年6月13日 6:35a.m.(日本時間)にスペースX社Falcon9によってヴァンデンバーグ空軍基地から打上げられました。打上げ79分後に高度約540kmで軌道投入され、同日9時半ごろに初交信に成功し、打上げから21時間後にはアンテナ展開の成功を確認。そのニュースは全国のテレビやニュースでも取り上げていただきました。

打上げイベント時の様子
宇宙でアマテル-Ⅲがロケットから分離する瞬間(提供:SpaceX)
宇宙でアンテナ展開に成功。(アマテル-Ⅲ搭載のセルフィーカメラで撮影)
初交信に成功した時の管制室の様子

そして、7月13日、ファーストライト(初画像)の取得成功を発表しました。QPS研究所の衛星2号機「イザナミ」が持つ、民間のSAR衛星として日本最高精細のレンジ分解能の記録を70cmから46cmへと更新しました(通常モードでの観測のため、アジマス分解能は2号機同様の1.8m)。

公開されたファーストライト

ファーストライトから12日後の7月25日、スポットライトモード(高精細モード)での画像取得に成功したことを発表しました。7月20日に観測した横浜の画像においては、民間のSAR衛星として日本最高精細となるアジマス分解能46cm,レンジ分解能39cmでの画像取得を実現しました。

公開されたスポットライトモードの画像(横浜市、2023年7月20日 0時27分)

2023年12月に打上げQPS-SAR5号機「ツクヨミ-Ⅰ(ツクヨミ・ワン)」

当初予定していたロケット会社の変更があり、6号機の打上げが先となりましたが、続いて5号機も2023年8月に米国ロケット・ラボ社との打上げ契約を新たに発表。愛称が「ツクヨミ-Ⅰ」であることにちなんで、専用ロケットのElectronの打上げミッションネームは「The Moon God Awakens(夜の神が目覚める)」と名付けられました。

2023年12月15日13時05分(日本時間)にニュージーランドの射場から打上げ、高度約575kmで無事に軌道投入され、初交信に成功しました。翌日16日の早朝には収納型アンテナを展開。そして打上げからほぼ1ヶ月後の2024年1月17日に、ファーストライト(初画像)の取得成功を発表しました。

ミッションマークが描かれたElectronロケット(提供:Rocket Lab)
ツクヨミ-Iが軌道投入された瞬間(提供:Rocket Lab)
軌道上で展開したアンテナの様子
初交信に成功した時の管制室の様子

その後も順調に調整が進み、2024年2月1日にはQPS研究所の傾斜軌道にある商用機として初めてスポットライトモード(高精細モード)の画像取得にも成功しました。この傾斜軌道では、中緯度帯の世界の大都市圏の観測頻度がアマテルシリーズ(太陽同期軌道)よりも多くなるため、ニーズの高いエリアの観測にさらに活躍していく見込みです。

ツクヨミ-Ⅰによるスポットライト画像(シドニー、2024年1月27日 03時39分 [現地時刻])

2024年4月に打上げQPS-SAR7号機「ツクヨミ-Ⅱ」

傾斜軌道への小型衛星投入を目的とするスペースX社の新たなライドシェアサービス「Bandwagon」の初回ミッションで打上げたQPS-SAR7号機は、5号機と同じツクヨミの愛称で、「ツクヨミ-Ⅱ」となりました。「ツクヨミ-Ⅱ」は2024年4月8日 8:16a.m.(日本時間)にケネディ宇宙センターの発射場、LC-39Aから打上げられたFalcon9によって、10時2分(日本時間)に予定されていた軌道に投入され、その1時間後には初交信を行い、同日深夜に収納型アンテナの展開を成功しました。

Bandwagon-1ミッションで飛び立つFalcon9(提供:SpaceX)
初交信に成功したときの管制室の様子

2024年5月23日にはスポットライトモード(高精細モード)の画像取得に成功。商用機としては3機目となり、安定的な初期運用の手法を確立しつつ、衛星コンステレーションと提供サービスの拡充に向けて順調に進捗しています。

ツクヨミ-Ⅱによるスポットライト画像(パリ、2024年5月16日 08:34[現地時刻])

2024年8月に打上げQPS-SAR8号機「アマテル-Ⅳ」

QPS-SAR8号機「アマテル-Ⅳ」は、 2024年8月17日3:56a.m.に米国カリフォルニア州ヴァンデンバーグ宇宙軍基地の発射場Space Launch Complex 4(SLC-4)から打ち上げられたスペースX社Falcon9「Transporter-11」ミッションによって6:32a.m.に太陽同期軌道へ投入されました。その約2時間後、初交信に成功。同日の夜までにアンテナの展開も完了し、順調に初期運用をスタートさせました。

Transporter-11ミッションで飛び立つFalcon9(提供:SpaceX)
初交信に成功したときの管制室の様子

2024年9月20日にはファーストライトとして、ストリップマップ(通常モード)とスポットライトモード(高精細モード)を同時に公開。これまではストリップマップの後に1週間ほどかけて調整をし、スポットライト画像を公開していましたが、8号機に関してはこれまでの知見と経験から、同時に公開することとなりました。

アマテル-Ⅳによるスポットライト画像(五島市、2024年9月18日 11:32 [現地時刻])
×

衛星の愛称とミッションロゴについて

QPS-SAR1号機、2号機の愛称である「イザナギ」と「イザナミ」は、日本神話において国を作った神様とされていて、QPS研究所の衛星が日本発の衛星であることや、会社名(Institute for Q-shu Pioneers of Space)の一部である「九州(Q-shu)」にある高千穂が天孫降臨の地であることにより名付けられました。
QPS研究所が作りだす衛星ならびに世界は、この2機の衛星から始まるという意味も込められています。イザナギ、イザナミの2機は、私たちの技術を見事に宇宙で実証し、素晴らしい結果をもたらしてくれました。
そして、続く衛星も神様のお名前をお借りして、「アマテル」と名付けられています。
アマテルはアマテラスの別称で、天空を照らす太陽神とされています。QPS研究所が目指す36機によるコンステレーションの最初の1機となった6号機「アマテル-Ⅲ」が周回する軌道は、3,4号機「アマテル-Ⅰ,-Ⅱ」が予定していた軌道と同じく太陽同期軌道です。今後、QPS-SARシリーズは衛星ごとではなく、軌道ごとにその名を持つことになり、この太陽同期軌道に入る衛星はアマテルの名前が与えられることとなります。
2023年12月に新たな軌道に投入されることになったQPS-SAR5号機に対しては、これまでと同様に日本神話から神様のお名前をお借りして「ツクヨミ-Ⅰ」と名付けられました。以降、中傾斜軌道に投入される衛星にはツクヨミの名前が与えられます。

未来を牽引するアイデア、
宇宙産業を躍進させる発明の数々

Technology

小型SAR衛星を実現する
QPS研究所の技術力・開発力

小型衛星

小型衛星の開発・設計・製造・打ち上げまでを担える企業は日本でも少なく、QPS研究所の設計・開発能力、QPS研究所のもつ宇宙機器製造に長けた九州地場企業のネットワークがもたらす高い製造技術に対して非常に高い評価を受けております。

100kg級小型衛星用大型・超軽量アンテナ

直径3.6m、質量10kgの大型、超軽量展開型パラボラアンテナ。海外宇宙機関や国内の大学、世界最大手の宇宙産業企業より取引ならびに開発の打診を頂いております。また、国内外の投資家からもその技術と高い利用可能性に強い関心を持たれています。

デブリセンサー

宇宙を飛んでいるゴミ(スペースデブリ)を計測するための装置です。宇宙機関やベンチャーのデブリ観測で使用されているデブリセンサーの仕組みを弊社が最初に開発しました。デブリの分布を検出することができるので、今後大きな市場の伸びが見込まれているデブリ対策、デブリ減少において多くの利用が期待されています。
※株式会社IHIと共同開発(特許取得済)

×

「いい発明というのはシンプルなことが多い。」

「宇宙デブリの研究は海外に後れを取らないように日本でも進めていたけれど、QPS研究所立ち上げまもない頃、2006年ごろかな、1mm以下の微小デブリの密度はアメリカとヨーロッパの発表ではだいぶ差があることに気づいたんだ。
それぞれの推定方法が違ったから、一体どっちが本当なんだ、ということを確かめたかったんだよ。砂のような細かなデブリでも当たれば衛星は劣化していくから、微小デブリを調べることは宇宙開発において重要なことなんだ。
さて、どうやって調べればいいか考えていた時に、共同創業者の櫻井さんが、ふと、「基盤の上に電気が通った細い線を並べて敷き詰めておいて、微小デブリがぶつかったら、物理的にその線が切れて電気も切れるから分かるじゃない」と。
切れた本数からデブリの大きさも分かる。原理としてはとてもシンプルだから、もうすでにそんなことは誰かがやってるんじゃないかと思って調べたけれど、実はどこもやっていなかったんだ。なので、まずは作ってみよう、ということで、試作を作ってみた。
何回目かでうまく作れたように見えたけれど、実際にそれに電気を流してみると、導通がない。小さなものだから、そこにハードルがあったね。試作を重ねて使えそうなものが出来上がったから、そこで衛星に乗せて実証をしようとしたんだ。
海外でも微小デブリを調べるための開発品が色々あって、それは、デブリが当たった時に出るパルスの波を検知するものや、三角測量の原理で調べるものなど、高度なものが多い。でも、シンプルな原理ほどやはり使えると思う。
ひらめきから生まれたこの開発は、その後に実用化され、研究に活用されているよ。」
(QPS研究所ファウンダー 八坂哲雄)

非火薬式衛星分離機構

衛星分離機構とはロケットと衛星を切り離す装置になります。非火薬式にすることで、従来の火薬式の衛星分離機構に比べ衝撃レベルも数分の一に低減され、衛星メーカーならびに衛星の運用者にとっては、衛星の必要とする耐久性を緩和できる可能性がある点で大きなメリットがあります。また、特に試験用途などでも火薬式と違い都度破壊されるものではないため、再利用可能な点でも画期的な製品となります。世界最大手の宇宙産業企業を中心に宇宙関連企業の方々に取引の興味を持たれております。
※株式会社中島田鉄工所と共同開発

×

「宇宙開発の歴史を紐解くと、『切り離し』、それは失敗の連続だった」

「昔、ロケット開発をやっていたときから『切り離し』という機構は難しく、失敗の連続だった。元々、ロケットエンジンの切り離しには火薬を使っていて、昔はその量を調整しながらやっていたね。
そしてその後、マルマンクランプという方式を採用するようになって使用する火薬の量は少なくなったけれど、それでも火薬を使うとやはり衝撃は出るし、価格も結構高い。それに法的な規制も強くてね、管理が大変なんだ。
大学で小型衛星の研究をすると同時に、衛星の切り離し部分についても開発をはじめ、1990年代後半ごろから火薬を使わない方法を考えて、だんだん改良していった。
出来上がったものは良い成果を出してね、価格はそれまでの5分の1くらいになったな。サステナビリティが重要視される現代だけれど、宇宙開発も再利用可能なものにシフトしないと。そうじゃなきゃ、間違いだ。」
(QPS研究所ファウンダー 八坂哲雄)

導電性テザー

誘導起電力を利用して電流を流し、その電流と地磁場との干渉で発生するローレンツ力で高度を上下できる紐のような装置です。2017年1月28日にJAXAにより国際宇宙ステーションから分離した補給機「こうのとり」6号機で、スペースデブリ除去システム構築の最初のステップとして、導電性を持つ「テザー」の実証実験が実施されたことでも知られています。
九州大学での早い時期より蓄積されたテザー衛星研究の知見を活かし、弊社はJAXAの委託を受けて、導電性テザー実証実験用衛星のシステム設計や実験装置用制御装置の開発を行いました。

×

「これは大好きな魅力的な研究テーマ」

「宇宙で複数の繋がれた衛星、それをテザー衛星、その形態をテザーシステムと呼ぶのだけれど、衛星と衛星を紐で結ぶと色んな研究ができる。
姿勢安定や軌道間の輸送、発電・推進力を発生させたり、軌道の変更などなど。これは趣味の釣りがきっかけでね。伸びる釣り竿を見て、このシステムを考えたんだ。
特に、静止衛星のテザーシステムを作ったらすごいことになるなと思う。でも、デブリで切れることになる可能性も十分にあって、(それでデブリの研究も始めたわけだけれど)、解決するためには紐を2本にダブルテザーしたりね、そして、1本切れても影響が少ないようにノットを途中にたくさん作っておくとかね、まだまだ色々改良できるね。」
(QPS研究所ファウンダー 八坂哲雄)

軌道離脱用展開セイル

小型衛星用のデブリ化防止機器。他のデブリ化防止のための製品は基本的に使い切りである(一度使用すると中止したり、再使用することができない)のに対し、弊社の軌道離脱用展開セイルは展開、収縮を自由にできるため、再利用・再調整できる点で差別化がはかれています。
※菱計装株式会社と共同開発