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観測事例:大規模洪水被害の緊急観測(令和7年台風18号、台湾 花蓮県)

この度の令和7年台風18号でお亡くなりになられた方のご冥福をお祈りするとともに、ご遺族の皆さまにお悔やみを申し上げます。また、今もなお復旧のさなかにある被災された皆さまに謹んでお見舞いを申し上げます。

2025年9月、台湾東部の花蓮県を襲った令和7年台風18号は、過去の地震や豪雨により形成されていた天然ダムを決壊させ、甚大な洪水被害を引き起こしました。QPS研究所はこのたび被災地の状況を迅速に把握するため、業務提携している日本工営株式会社(東京都千代田区、代表取締役社長:福岡 知久、以下「日本工営」)と共に、2025年9月23日に台湾で発生した河道閉塞決壊の状況を小型SAR衛星「QPS-SAR」による観測画像を活用して調査しています。この度、河道閉塞決壊箇所の状況把握、下流被害状況の判読に取り組んだ結果、河道閉塞と決壊、下流被害に関する有効な情報が得られましたので、観測画像とその内容を公開いたします。

台湾 花蓮市 万栄郷 馬太安渓堰塞湖 (2025年9月29日 04時18分, 現地時間)

【日本工営株式会社 国土基盤整備事業本部 砂防部 部長 三池 力 氏 コメント】

「QPS研究所が提供するQPS-SAR画像により、河道閉塞を引き起こした深層崩壊地、対岸に乗り上げた堆積物による閉塞の痕跡(平坦な堆積面)、越流による大規模な侵食地形、湛水池の分布形状、越流箇所の状況、下流で生じた道路や橋梁等の流出、河川氾濫の到達範囲など、河道閉塞の越流・決壊にともなう地形等の変化が鮮明に判読できました。
本画像は、モノクロ写真と同等の情報量を一枚の強度画像(※)から読み取ることが可能であり、極めて高い解像度を有しています。また、撮影時刻が現地時間の午後21時25分、午前4時18分であったことからも、昼夜や天候に左右されず即時に観測が可能であるという、QPS-SARの高い即応性を実感しました。QPS-SAR画像は今後、河道閉塞や火山噴火などに伴う大規模土砂災害の発生時における緊急調査対象の判断に資する情報としての活用が期待されます。
当社は今後もQPS研究所と連携し、社会基盤を支える建設コンサルタントのリーディングカンパニーとして、SAR衛星データの利活用を通じた新たな事業の創出と推進に取り組んでまいります。」

台湾 花蓮市 光復郷 (2025年9月25日 21時25分, 現地時間)

今回の事例は、災害時の状況把握や復旧計画の立案には定期的かつ昼夜や天候を問わない観測情報が有効であることを示しています。QPS-SARコンステレーションはこれらの強みを持ち、迅速かつ的確な災害対応を支えることが可能です。
QPS研究所は、準リアルタイムでの観測データ提供を目指す「QPS-SARプロジェクト」を今後も推進し、ビジョンとして掲げる「衛星を通じて、人々を不安から解放し、日々の暮らしを支える」の実現に向けて歩みを進め、社会の安全と復興に貢献してまいります。

(※) SAR観測による画像のこと。反射の強度をグレースケールで画像化するため、このように呼ばれる。SARの持つもうひとつの代表的な機能である干渉SAR(InSAR)と対比した表現。