JAXAと「超小型LバンドSAR衛星の検討及び試作試験」に係る研究開発契約を締結いたしました
株式会社 QPS 研究所は、国立研究開発法人宇宙航空 研究開発機構(以下「JAXA」)が調達する「超小型 L バンド(※1)SAR 衛星の検討及び試作試験」に関する研究開発契約を締結しました。本契約では、衛星 2 機による協調観測の技術実証を目的とした超小型 L バンド SAR 衛星の検討及び試作・試験を行うことを目的としています。
QPS 研究所は 100kg 台の X バンド(※2)小型 SAR 衛星「QPS-SAR」を開発、現在2機を運 用し、2025 年以降を目標に 36 機の小型 SAR 衛星コンステレーション(※3) を構築して、地球 のほぼどこでも任意の場所を平均 10 分間隔という準リアルタイムでの地上観測データサー ビスの提供を目指しています。この度、本契約により、独自開発した X バンド用のパラボラ アンテナを L バンド向けへと転用し、ミッション部、バス部、アンテナの設計及び製造への 取り組みに挑戦することになります。また、本研究開発を通じ、衛星 2 機による協調観測に 向けた高度な技術を要する開発へ新たにチャレンジします。QPS 研究所は引き続き、「宇宙 の可能性を広げ人類の発展に貢献すること」を企業使命に、SAR 衛星開発に関する知見を深 め、さらに技術を高めてこの領域で世界のトップランナーになることを目指します。
(※1)L 帯とも言われるマイクロ波の周波数帯域の一つ。1GHz 帯の極超短波にあたり、波長 150~300mm、1 ~2GHz の電波で、衛星電話や携帯電話などの通信や地球観測衛星のレーダーなどに用いられています。
(※2)X 帯とも言われるマイクロ波の周波数帯域の一つ。9GHz 帯のセンチメートル波にあたり、波長 25~37mm、 8~12GHz の電波で主に軍事通信やレーダー、気象衛星、高分解能の降雨レーダー、地球観測衛星の合成開口レ ーダーなどに用いられています。
(※3)複数の人工衛星によって、高頻度な地球観測を可能とするシステム。(コンステレーションは「星座」の意。)
<超小型LバンドSAR衛星の活用方法として期待されること>
X バンドは光学カメラで撮ったような画像化や細かいものを見るのに適していて、森林がある箇所を観測すると、木の上の葉っぱ(樹冠)で電波が反射します。一方でLバンドは、マイクロ波の中でも特に波長が長いため、電波が葉や枝、草を通過し、幹や地表面に近いところの情報が得られるという強みがあり、特に下記の活用方法が期待されます。
地形図:
衛星2機による協調観測を行うことで、山間部等の植生域においても精度の高いデジタル標高データ(Digital Terrain Model, DTM)を作成することが可能となります。
地殻変動の3次元計測:
超小型Lバンド衛星を傾斜軌道に投入し、干渉SAR解析を行う事に挑戦します。これにより、地殻変動の南北方向の観測精度が向上するため、JAXAが運用するLバンド衛星の観測と組み合わせることで、上下・南北・東西の3次元の地表の変位を、面的に捉えることが可能になります。これが実現すると、地震や火山などによる災害状況把握、人工構造物や地盤の変位監視、GNSS測量と組み合わせた測位精度向上などへの更なる活用が期待できます。
環境監視:
LバンドSAR衛星の特長として森林構造やバイオマスの推定に強みを持っています。衛星2機による協調観測を行うことで森林の立体構造を更に精度高く抽出することができ、森林炭素量や温室効果ガス収支の評価が出来るようになることで、ESG、SDGs、カーボンニュートラルへの取り組みに大きく貢献できると考えられます。