鹿児島県立楠隼高等学校「シリーズ宇宙学」
2024年6月”ロケットのまち”鹿児島県肝属郡肝付町の鹿児島県立楠隼高校において、「シリーズ宇宙学」宇宙ビジネス人材育成プログラムの特別講義を行いました。楠隼高校は、全国初の全寮制公立中高一貫男子校として2015年に開校し、近くにJAXA関連施設である内之浦宇宙空間観測所があることから、JAXAと県教育委員会が協定を結び、JAXA職員や大学教員らが来校して「宇宙学」の授業を行うことが大きな特色となっています。今回の特別講義は昨年度から始まった取り組みで、「宇宙学」に加えて、実際に宇宙ビジネスに携わる技術者・研究者等が講義を行うことで、生徒が宇宙ビジネスへの理解を深め、それを経て、秋以降には生徒が自らテーマを設定した探究活動に取り組み、広い視野や好奇心、冒険・探究心、ものづくりの心を育むことを目指しています。ここでは1回目、2回目の講義の様子をご紹介します。
〇第1回「九州の宇宙産業化(事業創造)への挑戦」
6月13日の2024年度第1回目は、COO 市來敏光が「九州の宇宙産業化(事業創造)への挑戦」とのタイトルで講義をいたしました。
前半は世界の宇宙ビジネスの状況について紹介。現在、世界中で民間の新しい宇宙企業が増えてきて、国だけではなく、民間の力によって宇宙開発が進められてきていて、日本でも2005年以降に100以上の新しい企業が生まれていて、月や火星などに向けてどんなことを人類は行おうとしているのかを説明。そして、その世界の動きの中でQPS研究所がどのように現在の小型レーダー衛星を開発することになったのか、また九州の宇宙産業の発展について話しました。
後半にはどのようにビジネスを創っていくのかQPS研究所を例にしながら事業創造について説明しました。ビジネスにするために大切なのは、世の中の問題、不満を解決するものであること。そして、企画を立てるのに必要な要素、ピッチ資料の作り方、資金調達についてなど、ビジネスの最前線で起きている臨場感を感じる講義となりました。
休憩時間に講義の内容について質問する生徒達に答えるCOO 市來敏光。
〇第2回「小型衛星・ものづくりの挑戦」
2024年度第2回目の講義タイトルは「小型衛星・ものづくりの挑戦」。QPS-SARを開発・製造するエンジニアチームより、構造系を担当するオガワ機工の伊藤 慎二 氏、バス系を担当する昭和電気研究所の古賀 圭 氏、QPS研究所からは開発部長の上津原 正彦の合計3名が教壇に立ちました。
講師の紹介後、10班に分かれた生徒の皆さんの机に「射場作業」や「かみ合わせ試験」、「筐体FM製作」など24のプロセスが書いてある紙が配られ、「今日は”衛星の作り方”について講義したいと思います。いきなりですが・・・まずはこれらの言葉が書かれた紙を並べ替えて、人工衛星の作り方の順番を15分で考えてみて下さい」と、講師陣から突然の難題。生徒の皆さんはいきなりの課題に驚きつつもすぐに取り掛かり、プロセスを転記したポストイットを模造紙の上に貼り付けては並べ替え、班内で意見を戦わせながらのワークショップが行われました。
制限時間の経過後は講師陣から答えを発表し、どのように衛星をつくるのか、順序を追ってキーワードの解説をしつつ、ものづくりで重要となるマインドや思考法を交えて紹介していきました。オガワ機工の伊藤氏による「いつも心にプランB」の話では、生徒の皆さんがものづくりへの熱いトークに引き込まれていました。
衛星バス機器についての解説では、昭和電気研究所 古賀氏がラジコンカーのリモコンと自作の模型で、リアクションホイールがどのように動くのかを説明。間近で動作する機器を見ようと、前のめりで釘付けになる生徒もいました。
最後に講師からのメッセージとして、QPS研究所 上津原から「本日紹介した衛星の作り方は、QPS-SARという、いちケースの開発製造の順序であって、全ての人工衛星の作り方ではありません。もしも皆さんが人工衛星をつくる機会があれば、今日の話にとらわれることなく、自由な発想で新しいものを生み出していって下さい」とお伝えさせて頂きました。
講義終了後も講師に新しいアイデアを披露しに来たり、あるいは質問を尋ねに来たりと、楠隼高校の生徒の皆さんのモチベーションや発想力と知識量に、講師陣も驚きと新たな刺激を受けました。未来の宇宙人材の輩出に貢献するべく、QPS研究所は今後も教育イベントに積極的に参画していきたいと思います。
<メディア掲載>