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第78回放送技術フォーラムin九州・沖縄

2025年5月14日(水)、福岡市のNHK福岡放送局よかビジョンホールで「第78回放送技術フォーラムin九州・沖縄」が行われ、特別講演講師として参加しましたので、こちらでご紹介します。

今年、放送100年を迎えた日本放送協会(以下NHK)。中でも、今回で78年目を迎えた歴史ある本フォーラムは、NHKの九州・沖縄放送局の技術職員が調査・開発などに取り組んだ成果を共有する報告会で、放送サービスの質の向上を目的として開催されています。今回、防災・減災に資する迅速な報道に活用できる技術として当社へ「衛星リモートセンシング技術革新による災害報道の未来」の講演依頼を頂戴し、ソリューション事業部 部長 平田大輔(以下:平田)が登壇させていただきました。

本講演の聴講は会場となる、よかビジョンホールでの直接参加に加え、九州各県の職員も視聴できるようオンライン参加の体制が整えられていて、あわせて100名近い職員のみなさんが参加する形となりました。


13:00。
司会より能登半島地震でもリモートセンシングが活用されたこと、また将来、リモートセンシングはさらなる迅速で正確な防災・減災報道につながる技術として紹介され、特別講演の開始が告げられました。

今回の講演では、『小型SAR衛星コンステレーションによる準リアルタイム地球観測の実現に向けて』と題した内容を平田よりお話させていただきました。最初に当社並びに平田自身について、続けて当社が開発したQPS-SARの特徴とSAR衛星で得られるデータや情報について等をスクリーンを使って順次ご紹介いたしました。さらに、防災・減災に関して、日本並びに海外での発災の際にQPS-SARデータが活用されたユースケースについて実際のSARデータ画像をスライドでお見せしながらご説明しました。2024年に発生した令和6年能登半島地震の発災前後の同エリアの比較画像では、「同じ場所でも、地震後の画像では白く見えている部分があります。これは木々が土砂崩れによってなぎ倒されて地面が露出している状態を表しています。このように災害前の画像と比較することで、何が起きたのか判別可能です。これはSARに限らず地球観測衛星によるリモートセンシングの特徴となります」との平田の説明に、会場のみなさんも真剣に耳を傾けてくださいました。最後に、当社のQPS-SARプロジェクトについて、将来的に36機体制の衛星コンステレーションを構築していく旨を述べ、QPS研究所の理念「SHAKE THE WORLD. CHANGE THE WORLD.~宇宙の可能性を広げ、人類の発展に貢献する~」の言葉で講演を締めくくらせていただきました。

およそ30分の平田からのお話のち、職員のみなさんから平田への質疑応答の時間へと移りました。司会より、会場内並びにオンライン参加者に質問の有無の問いかけがあると、数多くの質問をいただきました。

そのうちの一つをご紹介します。

ご質問:「QPS-SARの観測画像がかなり高精細なので、データ量がかなり多いのではと思ったのですが、衛星の方では、生データをそのまま地上に送っているのでしょうか。それともデータを削減だったり、圧縮だったりした状態で、ある程度バッファをもたせてまとめて送っているのでしょうか?」

平田:「QPS-SARでは1観測あたりのデータが、数ギガバイトのため、データを無線通信で地上局に伝送するには多少の時間がかかります。さらに衛星自体も、観測後すぐに地上局と直通信ができるとは限らないため、衛星内に記憶媒体を備えております。
先ほどご質問でおっしゃられた通り、圧縮も削減もしていない生データを伝送します。そして、地上でそのデータを、合成開口処理をして画像化するということをやっております。
また、『データを間引いて早く下ろす手法はないのでしょうか』というご質問もいただきましたが、まさにQPS-SARには軌道上画像化装置が搭載されており、衛星のエッジコンピューティングで、宇宙空間で画像化することもできます。さらに、その画像化したものを圧縮して、衛星間通信を使ってデータを迅速に伝送する手法もあります。商用サービスはまだしておりませんが、観測後に短時間で画像を地上に届けた実績はございます。
将来的には光データ中継衛星を開発されている事業者様が日本にも世界にもありますので、そういった高速データ中継サービスを利用したり、我々の軌道上画像化装置の実証を重ねて実用化したりといった、この両方のアプローチで、データを届けるスピードを早くしていけると考えています。」

気付くと、質疑応答の時間はあっという間に40分を超えていました。有難いことに質問者が途切れることのない質疑応答時間でしたが、次のプログラムも迫っていたようで、司会より本講演の締めの挨拶が行われ会場は温かい拍手で包まれました。


今回、NHK福岡放送局様にお声掛けいただき、短時間ではありますが職員のみなさんと同じ空間でフォーラムを体感させていただくという時間を頂きました。NHKの災害・防災並びに報道に関する意識の高さを伺い、QPS研究所が掲げている経営理念「人類の発展に貢献する」をさらに強化していこうと思った次第です。フォーラム後にNHK福岡放送局様より、今回の特別講演につきまして、「衛星通信・画像解析などの先端技術を知ることができて、とても参考になった」「データ分析する企業と協力することで、いろいろと可能性が広がることを知った」などと、大変嬉しいお言葉を頂きました。当初設けていただいた質疑応答の時間を超えての興味深い質問の数々に、NHK職員のみなさんの本フォーラムへ熱心に取り組まれている姿勢を伺うことができ、今回講演のお話を頂けたことを大変嬉しく思い、改めて感謝申し上げます。